都築響一『TOKYO STYLE』電子書籍版@東京アートブックフェア

寺田倉庫で開催されている東京アートブックフェアに行ってきた。

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カメラマン・編集者の都築響一さんのブースでリリースされたばかりの電子書籍版『TOKYO STYLE』に惹きつけられた。『TOKYO STYLE』は東京で暮らす人々の部屋をありのままに撮影して話題になった写真集。布団が敷かれた畳の部屋にスピーカーとギターが置かれ、ジーンズとTシャツに囲まれた表紙に『TOKYO STYLE』の赤いタイトル文字はかなりインパクトがあった。

ファッション雑誌でオシャレなインテリアが次々に紹介される中、4畳半一間のアパートの部屋には生活観という言葉を超えたリアルな個性があった。そこに部屋主は写っていないけれど、置かれたものや間取りから部屋主がどんな人なのか想像を掻き立てられ、存在を感じることができる。紛れもない『TOKYO STYLE』がこの写真集にはある。

しかし、大きくて重い写真集は見応えはあるけれど保管を考えるとなかなか手を出せない。文庫版は持ち運びには都合がいいけれど写真を見るには小さい。電子書籍はその点を解消している。私は引越しのたびに本を処分していて、もう一度読みたい本は買い直している。『TOKYO STYLE』は北海道から愛知県に引っ越すときに手放した。いつかもう一度手に入れたいと思っていたけれど価格とサイズがネックになっていた。

今回リリースされた電子書籍版『TOKYO STYLE』は新圧縮技術を使いカード型のUSBに収められている。パソコンで見る写真は、ただでさえリアルな部屋が更にリアルに生々しくよみがえる。拡大していくと本棚に並んだ本のタイトルが読めるほどだ。紙に印刷された写真からパソコンで見るデータに姿を変えても、都築さんが撮った写真には部屋主のライフスタイルがそのまま焼きつけられている。

小さなプラスチックケースに入ったカードにそのすべてが詰まっているから本棚のスペース問題も解消された。持ち運びも便利になった。ひとつひとつ手作業でコピーして作られているという家内工業的な制作工程もいい。自分の作品を届ける方法として見事な完成形だと思う。

価格は3500円。当時の写真集が中古でも結構高くて買えずにいた私にとって嬉しい価格。迷わず購入を決めた。あのころ夢中になった写真集が進化を遂げて帰ってきた。都築さんから直接購入できたことも嬉しい。そのとき交わした会話もいい思い出になった。引越しのたびに本を処分しているけれど、この『TOKYO STYLE』は手放す理由がない。今後何度引っ越してもずっと持ち続ける特別な一冊となった。何ならポケットに入れて新居に向かいたいと思う。

 

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