心を動かされた映画に共通する4つのテーマ

高校へ行かずフリーターとして10代を過ごした私にとって、音楽と映画と本が教科書だったし友達だった。結婚の誓いではないけれど、健やかなるときも病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも、いつも一緒にいたのは音楽と映画と本だった。今日はその中で映画の話を書こうと思う。


今年観た映画で印象的だった作品

『無垢の祈り』
10歳のフミは学校でいじめられ、家では虐待されている。どこにも居場所がなく助けてくれる人もいない。町で起きている連続殺人事件の現場に行き犯人にメッセージを残す。フミが犯人に向けて「アイタイ」と書くチョークの文字、容赦なく繰り返される暴力、自転車に乗るシーンの開放感、夏なのに温度を感じさせない映像。息がつまり胸がはりさけそうだった。

『寝たきり疾走ラモーンズ
寝たきり芸人あそどっぐの日常を追ったドキュメンタリー。お笑いライブや打ち上げ、芸人仲間へのインタビュー、ネットに投稿する動画の撮影風景、ヘルパーさんによる介助の様子、障害者であることを活かしたネタの数々。自分の人生を引き受けて全力疾走する生き様に笑いと涙がこぼれた。監督の目線も言葉も態度もニュートラルで、どう感じるかを観る者に任せている。任せながらもエンディング曲で思いをぶつけてきてグッときた。

『ゴンドラ』
11歳のかがりは母親と二人で瀟洒なマンションに暮らしている。高層ビルの窓ガラス拭きをする青年との出会い、ペットの文鳥の死、音叉とメトロノーム、母が大切にしている弁当箱、下北半島への旅。母子家庭の一人っ子という設定に自分を重ね合わせて心が乱れたけれど、美しい映像が救ってくれた。

『光』
視力を失いつつあるカメラマン雅哉と映画の音声ガイドの仕事をしている美佐子。二人それぞれの苦悩と心の動きが劇中映画『その砂の行方』とともに描かれる。多くの人が行き交う街の雑踏や風で揺れる木々や階段を下りる音など聴覚に響くシーンがいくつもあり、耳に残る映画でもあった。

パーフェクト・レボリューション
重度の身体障害があり車椅子生活を送っているクマと心に障害を持つソープ嬢のミツ。お互いを支えあいながら困難を乗り越え世界を広げていこうとする恋愛物語。ミツのエキセントリックな言動は純度の高いピュアさだと思った。不運を嘆かず「受け入れることのプロフェッショナルだ」というクマの言葉に心を打たれた。監督が「相当こだわった」という音楽もよかった。

『ヴィヴィアン武装ジェット』 
夫を亡くしたショックから妄想にとりつかたヴィヴィアンと引きこもりの山本。二人が痴呆症の玄太郎と出会ったことで敵と戦うことになる。血と涙にまみれたナンセンスとバイオレンスの連続。社会の仕組みや誰かに合わせるのではなく自分の価値観で愛を貫く人たちの物語。登場人物や台詞が過剰で独特。ラストシーンで泣いてエンディング曲でまた泣いた。

心を動かされた映画に共通するテーマ

こうやって印象に残った映画をあげてみて気づいたのは、私は「家族」「喪失」「障害」「希望」というものに心を動ごかされるんだなということ。そして、行き場のない思いを抱きながらも必死に生きている人たちや、逃げたり立ち向かったりしながら今を乗り越えようとする人たちに惹かれるんだと思った。

どの映画にも主人公をなんとかしようする人がちゃんと登場して(たとえそれがどんな結末でも)、私も希望を持って生きてもいいかなと思わせてくれた。映画はそういうものであってほしい。

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